2017年に登場したアキュストライク・アルファホーク。従来のナーフにはなかった高精度が売りで、また長らく空白であった純粋な狙撃ライフル型ナーフ(メガ・センチュリオンはありましたが)の国内再登場ということで大きな注目を集めていたナーフです。
※こちらは海外版のレビュー
ですが国内版はどうも初期不良率が高く、それもシリンダーが回転しないという同一症状が数多くSNS等で報告されたこともあり…特に期待はずれという印象を持たれた悲しいナーフでもあります。海外版はそういった事例はあまりない無いようなんですけれどもね。
今回手にしたのは国内版アルファホーク。いわゆる動作不良ということで捨て値で売られていたものになります。症状も定番のシリンダーが回転しないというもの。
せっかくなので修理にチャレンジしたいと思います。
現状確認
症状としては極めてわかりやすく、本来はトリガーに連動して回るはずのシリンダーが回転しないというものです。またこの症状が出る時はガキッという何かが噛むような音がします。
かといって再コッキングすると普通に回ることもありますし、何をやっても動かなくなることもあります。
どうしても回らなくなった場合は、この隙間からドライバー等の細長い棒を突っ込み、シリンダー回転ロッドを後ろに引いてあげると元に戻ります。
この回転不良は特定のシリンダー位置で起きるわけでもなく、再現性は不明です。
とりあえず開ける
何はともあれ分解しないと原因が分かりません。が、このアルファホークは分解には一つのハードルがあります。ボルトハンドルがなかなか取れないんですね。
捨ててもいいような精密ドライバーを突っ込んで赤いパーツを押し上げるようにしながらボルトハンドルを引き抜きます。
結構硬いので怪我には注意してくださいね。
分解するだけなら左側ボルトハンドルだけ外すとOKです。右側はそのままでも大丈夫。
あとの分解は簡単
ボルトハンドルが外れたら左側面に見えているネジを全て外します。ストックは一体部品ですのでネジは無し。
隠しネジなんかもありませんので、ともかく見えているネジは全て取りましょう。
ネジを全て取ったら左側面パーツを上に引き上げていきます。ストックとの接続部分で引っかかっていることが多いので気をつけてくださいね。
まず無いとは思いますがコッキングした状態(バネを圧縮した状態)で分解するとパーツが飛びだしてしまいます。トリガーを引いて空撃ちしてから蓋を開けましょう。
あ、そうそう。タカラトミー版は上面に注意書きシールがあります。カッターでパーツ分割面で切るか剥がさなければいけません。こちらも忘れずに。
パーツはぎっしり
中身は手動ナーフならではのリンク機構というか各部が連動したシステムです。結構な複雑さに臆してしまいます。
細かいバネも多数。そのおかげでパーツが飛んでバラバラになってしまうとお手上げに…。
高解像度の写真を置いておきます。画像をクリックすれば表示されるはずです。分解の参考にぜひ。
一番上(赤矢印)の円筒パーツと赤いパーツは心臓部であるエアシリンダーとピストン。中にスプリングが入っています。
真ん中(緑矢印)はダーツを装填するシリンダーの回転部。上のピストンやトリガーと連動した動きをするために複雑な構造になっています。トリガーを引くことでピストンロッドのロックを解放し、そして少し時間差でシリンダー回転ロッドを動かす仕組みです。
下の方(黄矢印)に有るのはトリガー機構と安全装置など。ダーツシリンダーがハマっていないとトリガーを引けないといった機能を実現しています。あとシリンダーの過回転を防ぐ爪につながっています。
今回の状況的にはおそらく真ん中のシリンダー回転部が怪しいと思いますが…
定番のグリスアップ
とりあえず定番のメンテナンスでもある潤滑剤の塗布をしてみます。プラスチックグリスが見当たらなかったので間に合わせのシリコンオイルで。
多分これでは無理だろうと思って試射…やっぱり駄目でした。
パーツのアタリを取る
本体中央部には螺旋状のパーツがあります。ロッドの突起が動くと溝に沿って力が加わる構造なんですね。前後運動を回転運動に変換する機構の一つでもあります。
こんな感じに動きます。
もしかするとこのパーツの製造過程で歪みなどが発生し、引っかかりが生じることでシリンダーが回らなくなるのではないかと。ガキッという噛むような音はその引っ掛かる音なのではないかと推測しました。
ということで細い棒ヤスリを使って引っかかりそうな角を少しだけ丸めます。
大きく加工してしまうと取り返しがつかなくなりますのでほんの少し…溝の表面を滑らかにするような感じで。それこそ削りカスが出るか出ないくらい。
で、再び組み付け。
結果としては多少の改善があったものの、やはり満足いくほどでもなく。回転不良が頻発することもあるのであまり意味はなかったのかも。
では本体の歪み?
実は本体を開いている状態、手で各パーツを押さえて動作チェックするとほぼ確実に動くんですね。
これがフタを閉めてネジ止めした状態となると不具合が頻発してしまう。
こんな感じに。ネジはほとんど締めていない状態です。トリガーを引いて離すとシリンダーが回転するのですが、動画では回転するような雰囲気はありません。
もちろんネジを全部締めても同じです。
いろいろ考えていくと、この部分(白い破線で囲ったパーツ)。このリンクロッドがコッキングした時に想定通りの動きをしていないのではないかと。でも動きを妨げるものは無さそう…。
原因発見?
で、辿っていくと怪しい犯人がいました。
本来はトリガーを引くとピストンロッドだけ前進するのですが、誤作動したときはピストンロッドとともにシリンダー回転ロッド…上の写真にあった破線パーツも同時に前進してしまうんですね。
正常動作ではピストンロッドとシリンダー回転ロッドの時間差を生み出しているのが人差し指で押さえているオレンジのL字状パーツなのです。
シリンダーにある溝に引っかかることで回転を止めておき(動画ではシリンダー自体を左手で押さえ、離しています)、トリガーを放したときに回転させるという構造です。シンプルで、かつ低コストで実現居ているわけですからナーフの設計者って凄いですね。
恐らく動作不良はこのL字パーツの爪がシリンダーの溝にうまく引っかからないことが原因なのではないでしょうか。例えばシリンダーの回転位置と同期ズレを起こしているとか、このL字パーツの動きが悪いとか。
とりあえずグリス等を塗布して動きを良くします。
あとパーツのある部分。矢印のネジを少し緩めにしておきます。キツく締めると動きが渋くなってしまうかもしれませんので。
ひとまず改善
色々と回り道をした感じがしますけれども、このL字パーツの調整で大きく状態が変わりました。
動画を撮る前に数十回ほどコッキングしましたが回転不良はなし。ほぼ正常に使えるレベルになったのではないでしょうか。試射していくと時々ですが回転不良が起きてしまいますが、そこはもう目をつぶる事にします。
結論としては
・シリンダーをロックするパーツの動きを良くする
そのために
- L字パーツにグリスを塗布(分解せず隙間からシリコンスプレーでも可能?)
- 上の緑矢印のネジを緩める
というだけでも症状が治まる可能性があります。少なくとも私の持っている個体はこれに該当しました。
もちろん複合的な要因でしょうからこれで必ず改善できるかどうかは分かりません。
まとめ
設計工学についてはド素人なので詳しくはわかりませんけれども、もしかすると精度を上げるためにパーツの”遊び”をタイトにしたために、例えば各パーツや本体の歪みといった様々な原因で設計通りに機能しなくなっているのではないかも…と思いました。
そうそう、このアルファホークは威力の低いグレートリガー版(デチューンモデル)です。でもボルトハンドルの引きが軽いので子供に渡すにはこちらの方がいいのかもしれません。あと個人的な好みですがボルトハンドルは右側だけの方が使いやすいですね。
すでにタカラトミー版アルファホークは取り扱い無しで市場在庫のみ。あえてこちらを買うことはないでしょうし、分解を伴う作業ですので万人にオススメできるものではありませんが…もし動作不良のものを安く手に入れる機会があったらご自身で修理をしてみてはいかがでしょうか。
最初は訳が分からなかったパーツの動きが見えてくるようになると、途端に面白くなってきます。
コメント
アルファホークの回転不良…ポンプのピストンの速度が関係しています。シリンダーとポンプの圧着が悪いと、回転機構との連携が取れなくて、回らなくなります。ポンプの圧縮が悪いと回転しなくなります。
なるほど、情報ありがとうございます。記事内で修理したアルファホームもやっぱり万全とはいかなくって、どうにもこうにも悩んでいました。
圧着不良であるのと、海外版では動作不良が少ないというのはメインスプリングの強さが影響しているってことなんでしょうかか。いわゆる強化スプリングに変えればもしかすると改善するかも?
改造バネが安く手配できそうなら次の工作ネタで再挑戦してみます。
アルファホーク回転不良…ポンプのシリンダーがピストンの前進で最高圧縮になり、ポンプシリンダーが回転シリンダーに圧着して発射…圧縮抵抗でピストンの前進速度が遅くなると回転が連動します。ポンプシリンダーの前進が渋いのが根本的な原因の様です。回転シリンダーをポンプ口に圧着させると回転するのですが…回転シリンダーのあそび・あたりにも関係あるみたいです…
とても助かります