前回の記事で米国でのパワー規制について記述しました。ナーフはBB弾を使うエアガンとは飛距離のレンジが全く異なるトイガンであり、そのパワーも銃刀法の規制値よりもかなり下に位置しています。
【海外ニュース】米国の消費者保護法がまもなく改定。NERFやBoomcoのパワー規制値の引き下げも?
一方で玩具としての規制値はかなり厳しく設定されるようで(※米国消費者保護法)、これがナーフやその他のソフトダーツガンに影響するのではないか?とも考えられています。
試しに計算
銃刀法の規制値で3.5J/cm^2以下という数字があります。
改正銃刀法 - 準空気銃とは
【準空気銃】単位面積あたりの運動エネルギー値が3.5ジュール以上のもの。そのようなエアガンは改正銃刀法によって所持が禁止されます。
6mmエアガンで言う0.98Jという規制値が有名ですね。これは主にエアガンに対するもので、例えば矢を打ち出すボウガンや金属弾を発射できるレールガン等には適応されません。
ではナーフのようなソフトダーツガンは?というところなのですが恐らくは誰も議論しないような分野ですので資料もなく、専門家の判断記事も見当たりませんでした。
今回は一応、含まれるであろうという前提で計算してみたいと思います。
これとは別に前述の米国消費者保護法(2017年4月改定)に2,500J/m^2という値があります。こちらはナーフなどのソフトダーツガンに影響する規制値となっておりますので合わせて計算したいと思います。
重要なのは単位面積あたりのエネルギー
Nストライクエリートのダーツは重さ1g、直径1.3cmですので断面積は約1.3cm^2。
規制値にある運動エネルギー密度(KED)は運動エネルギーを断面積で割った値になりますので、
70fpsで飛翔するナーフ弾は0.287J ÷(1.3cm^2)=0.212J/cm^2=2125J/m^2。
84fpsになれば上記式で2523J/m^2。
どちらも銃刀法としては問題なし、米国の基準では83fpsまではセーフというところでしょうか。
一方、細身で重量のあるBoomco弾については直径1cm、重量1.5g。
Boomcoの一般的な初速60fpsで打ち出すと0.251J。断面積は0.79cm^2ですのでKEDは0.317J/cm^2=3177J/m^2。
米国の規制値をオーバーしてしまっています。このままの数字を適応するというのであれば、Boomcoはパワーダウンは避けられないかもしれません。
実は話はもっとややこしい
実はこの話、非常にややこしかったりします。上記の計算式は硬い剛体であると家庭した時の計算になります。実際にはナーフやBoomcoのダーツは先端が柔らかくできており、着弾時には形状の変形を伴います。
そこで出てくるのが着弾時面積の測定です。
Standard Consumer Safety Specification for Toy Safety
http://files.instrument.com.cn/FilesCenter/20161101/201611110930/1.pdf
firing it at a suitable perpendicular hard flat surface from a distance of 300mm+-5mm mmprojectiles is the use of an impressionable contact surface (for example, covered with a carbon paper system) rather than inking the projectile.
染料をつけた弾体を紙に打ち込んで着弾時の面積を計測するという方法です。これでしたら計算上の断面積よりも大きくなりますので、運動エネルギー密度は下がる→初速の規制値も上がるということになります。
値によりますが、そうなればパワーダウンの必要性はなくなることになります。
日本の法律では大丈夫
どちらも日本の銃刀法規制値には遠く及びませんので国内での所持については全く問題ないと思われます。
問題は米国内での基準ですね。対象年齢が低いナーフやBoomcoは現行以上の大幅な威力アップはほぼ望めない可能性があります。
2大メーカーの製品を取り上げましたが、もちろん他の米国内で販売されるソフトダーツガンについても同様に影響を受ける可能性は大いにあります。
なお、あくまで噂レベルですがEUでは米国より厳しい安全基準が設けられており、同じオレンジトリガーでも米国版と欧州版の初速が違うという話も…
もし各国の同じ種類のナーフを手に入れることができたら試してみたいものですね。
余談ですが…パワーにかかわらず眼球保護は必須です
余談ですが眼球に対しては基準よりも非常に低い威力でも重大な怪我をする可能性があると言われています。安全なナーフだからとは言え、必ず保護ゴーグルをつけるようにしましょう。