射撃玩具において、例えば性能評価というといろいろな尺度があります。狙った場所を射抜く精度。何度撃ってもブレない安定性。もちろん純粋な威力もそうですし、サイズや重量といったユーザビリティ面も性能の範疇に入ると言えるかもしれません。
そんな数ある尺度の中でも弾速(初速)というものは客観的な比較がしやすい数値としてトイガン分野では重要視されています。特に銃刀法やフィールドレギュレーションという絶対的な上限値が定められていることもあり、改造を行う人にとっては弾速系は必須となっています。
もちろん銃刀法やレギュレーションの規制値には遠く及ばないナーフではありますが、やはり要望が多かったためか2018年、ついに公式の弾速計が登場しました。
モジュラス・ゴーストシリーズから。クロノバレル…の名前の通りに弾速計が付いた延長バレルになります。
今までナーフの弾速計といえばサードパーティ製のもの、エアガン用のもの、あとはいっそ自作するぐらいだったですが、こうやって比較的に低価格で販売されるようになったのは大変嬉しいことですよね。
商品説明にはナーフ専用とは書かれていませんけれども、果たして他のトイガンでも使えるのでしょうか?
レビューしようとして気づく違和感
と、測ってみようとして1つ気になったことが。
「あれ?光センサーが1対しかない」
銃身内に見える黒い穴がセンサーになります。
対向する場所にあるので1対ということですね。というか1対しかないのです。
弾速計の原理
一般的に弾速計は2点間の通過時間を計測することで速度を算出します。
公式は小学校で習いましたよね。おハジキとか弁当箱とか。
[速さ] = [距離] ÷ [時間]
1時間で100kmを走る車は速さは、100km ÷ 1時間=時速100キロ(100km/h)。
1秒で90m進むエアガンの弾の弾速は、90m ÷ 1秒 = 90m/s
弾速計に当てはめると、距離はセンサー同士の距離D、時間はセンサーAとセンサーBのそれぞれの通過時刻の差で求められます。
言い換えますと弾速計には少なくともセンサーが2対必要なんです。マラソンにしてもリレーにしても、スタート地点とゴール地点がないと距離も、時間も計れないわけですからね。
1対のセンサーでどう測るの?
配線を見ても隠れたセンサーはなく、この1対だけしかありません。
これでどうやって正確な弾速計が計れるんでしょうか。
実は1個だけ、ナーフならではの方法があったんです。
距離=7.2cm
この数字にピンとした人はかなりのナーフ通かもしれませんね。
そう、7.2cmというのは純正ダーツの長さなんです。これは公式な規格として存在しており、Nストライクシリーズから始まり現在のNストライク・エリートやモジュラスシリーズ用ダーツに至るまでほぼ変わっておりません。他の弾…例えば吸盤弾やアキュストライク弾もほぼ7.2cmです。ハズブロはこれを利用したんですね。
公式は前述のようにこの通り。
[速さ] = [距離] ÷ [時間]
これにナーフ弾速計を当てはめますと
[速さ] = [7.2cm] ÷ [ダーツが通り抜ける時間]
ということになります。
算数の問題でも電車を例にした文章題がありましたよね。
例題:長さ100メートルの電車が太郎君の前を5秒で通り抜けました。電車の速度はいくらでしょう?
公式に当てはめると以下の通り。
[速さ] = [100メートル] ÷ [5秒]= 20 m/s
これと全く同じ理屈なんです。
実証実験
非常に簡単ではありますがこの仮説を実証する方法があります。
長さの違うダーツを使うのです。
使うのは弾速計とファイアストライク。ただ手元にあったので…。
そのまま計測すると平均で11.3m/s。グレートリガーですのでかなり低い数字ですね。
これを1cm短く切ります。これで弾体の長さは6.2cm。
条件はそのままで平均13.7m/sにアップしました。かなり幅がありますので試行回数をもっと増やす必要がありますが、あくまでも簡易実験なので十数回だけで止めておきます。
長さ86%になるということは、計算上は116%アップの13m/sくらいになればいいんです。一方の実測値は120%アップの13.6m/s。ほぼ同じくらいの速度になりました。
0.5m/sの誤差はダーツの重量変化とか短くなったことで空気抵抗が減ったとか様々な要因があると思われますがほぼ仮定どおりかと。
ということは?
これらの結果から言えることは、この弾速系はナーフダーツ専用だと言うことになります。おそらく多くの人が考えたであろう、エアガン用としては全く使えない可能性があります。
使用する弾のサイズは7.2cm÷6mm=12倍差もあります。エアガンを測って表示値を12で割れば実際の弾速が得られるのかもしれませんけれども。残念ながらエアガンは現在、非所持のためこれ以上は省略いたします。
ナーフ”専用”の弾速計として
レビュー記事で詳しくご紹介いたしますが、コンディションチェックに使えます。ナーフはスプリングの劣化やグリス切れで著しく飛距離が落ちる場合がありますので。また電動ナーフだとバッテリーの新旧の判別にも。古いほど初速は低くなります。
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原理的にライバルやメガシリーズでは使えない(バレルが狭くてダーツが入らない)ということからも、完全にノーマルダーツ専用品ということになりますね。